気になる相手に自分のいいところをわかってもらうためにアピールしたのに、うまく伝わらないことも……。心の距離を縮めるために大切なことは何？
◆自分の魅力を伝える「プレゼン」の落とし穴
好意を抱いてほしい相手には、自分のいいところを多く知ってほしいと願うもの。
望ましい印象を与えるために、自分の言葉づかいや見た目をコントロールすることを、心理学では「自己呈示」と呼びます。別名、セルフプレゼンテーションとも呼ばれており、名の通り、自分の魅力を社会や特定の誰かに対してプレゼンすることを意味します。
自分の魅力を相手に伝えることは、とても重要なことではありますが、少し間違えると単なる自己満足になってしまいます。
私は、印象アップのセミナー講師をしていますが、参加者の方から「自分を知ってほしいから、たくさん喋ったのに、相手の反応がイマイチだった」というお悩みをよく伺います。自分がいいと思って伝えたことが、相手にとってはいいと思われなかった……これは、なぜでしょう？
その落とし穴の正体は「一方的なプレゼン」にあるのではないでしょうか。どんな相手にも関わらず、とりあえず自分がいいと思った情報を伝える、そんな一方的なコミュニケーションを取っていては、相手との距離もどんどん遠ざかってしまいます。
一方で、自分のある面をさらけ出すことによって、相手との距離をぐんと近づける方法もあります。それが「自己開示」と呼ばれるものです。
「自己呈示」と「自己開示」。似ているようで、実は受け手の印象が大きく変わることもあるのです。
◆素直に自分を見せる「自己開示」で、相手の心を開かせる
あまり親しくなかった相手だけど、悩みを相談されることによって距離が近づいた。このような経験、ありませんか？
「自分にだから話してくれること」、「恥ずかしいことでも打ち明けてくれたこと」に対して、人は相手が心を開いてくれていると感じます。その結果、自分も相手に心を開きやすくなるのです。これが、自分のいいところだけを伝える「自己呈示」と、「自己開示」の異なる点と言えるでしょう。
魅力的な部分を一生懸命伝えることで、自分のことをよく知ってもらえるかもしれません。しかし、それが好意に繋がらなければ意味がありません。自分の魅力を伝えることはたしかに重要なことですが、相手にとって興味がもてる内容なのかを考えた上で、相手の反応をこまめに確かめながら、一方通行にならないよう伝えることを忘れてはなりません。
「デートはプレゼンじゃない。相手と楽しむこと」
これは当たり前のようですが、実際、これを理解してデートに挑むのはとても難しいことです。好意を抱いてほしい相手には、自分の魅力をたくさん知ってほしいと思うと、つい無意識に自分をプレゼンしてしまいます。しかし、相手がそれを魅力だと思うかどうかは分かりません。それよりも、「2人で一緒に過ごす時間をいかに楽しむか」を意識する方がはるかに重要なのではないでしょうか。
◆「嫌われなくない」と、自分を無理に演出するより、さらけ出す
特に男性のセミナー参加者の方から、「相手とうまく喋ることができない」というお悩みを伺います。でも、自分は相手に好意をもっているから、もう一度デートに誘いたい。しかし、お相手はどう思うでしょうか？ 初デートで、ほとんど喋らなかったのですから「私のこと興味ないのかも」と不安に思っているかもしれません。なのに、「楽しかったから、また会いたい」などと言われても、ますます混乱するでしょう。こういうときこそ、実は「自己開示」のチャンスなのです。
たとえば、デートのときに「とても恥ずかしいんですが、意識している女性の前では、うまく喋れなくて……」と、伝えてみます。喋らないことが、興味がないことではないということを伝えることが出来るとともに、自分のことを素直にさらけ出すことによって、相手に心を開いていることを伝えられます。隠したいことほど、相手に素直に打ち明けてみることによって、それが相手との距離を近づける大きなきっかけにもなるのです。
お笑い芸人さんがモテる理由のひとつに、格好つけるのではなく、すべてをネタにしてさらけだすという、職業的な「自己開示」側面があるためかもしれません。自分がいいところだけをプレゼンしている関係性では、表面的な関係しか構築できません。「相手に心を開いてほしい」そう思うのであれば、まずは自分の心を開いてみましょう。
